比較優位の考え方

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不具合解析では比較優位を分かっていないと困ったことがおこります。


たとえば、いわゆるスーパーハカー級の人たちが実装したシステムの不具合がフィールドからあがってきた場合。


実装をすみからすみまで分かっているハカーのみなさんに解析仕事を回すのはいまいちです。


そこは2軍または急ごしらえの解析部隊にまかせるのが比較優位的には正しい選択です。


単価あるいはコスト効果の面から考えれば当然そうなるわけですが、困ったことに、解析をおこなう当の本人たちがそのことを理解できていない場合があります。


すると、解析するにあたって沸いてくるちょっとした疑問や問題点をハカーの皆さんに問い合わせしてしまうのです。


ひどくなると結局ハカーが自分で解析しているのと変わらない状況になり、比較優位は働かなくなります。


解析部隊は部隊としての担当範囲をこなして、修正部隊に検討を依頼するだけでよいのです。修正はハカーさんが対応するかもしれません。ハカーさんなら、まとめられた検討依頼内容に問題があるかどうかを判断して取捨選択できます。依頼内容に問題があれば突き返せます。


そうやってやりとりを繰り返すことで、組織全体の能力が向上します。


もちろん分担の線引きはあいまいになりがちで、解析部隊のレポートはアナだらけかもしれません。しかしながら、アナがそこにあるということを明確にするのにかかる工数も、ハカー自ら解析をおこなうよりも全体として工数を削減できていると考えられます。



先ほどは解析部隊がハカーさんに頼ってしまって比較優位の利点が損なわれることを書きましたが、ハカーさんの側でも、比較優位を理解して解析作業を任せることの意味をしっかり理解しなければなりません。


良くあるのは、解析作業の進捗が遅遅として進まないときに、ハカーの方から『もっと早くできると思うんですが』というような意見がでることです。あるいはマネージャレベルも、目の前の締め切りに目を奪われて『これならハカーさんにやってもらったほうが効率がいいかも』という落とし穴に落ちてしまいます。これは根本的に分業の目指す目標を見失ってしまっていることにみなさんもっと気づいた方がいいです。どんなに遅くても進んでいるなら、”その間ハカーは他の作業を進められる”ということにだけでも着目した方が良いと思います。


別の問題もあります。自分たちが実装したシステムの不具合解析を他人に任せるということは、文書化不足や実装のまずいところをつまびらかにしなければなりません。ベテランさんならどんな些細なことでも電子ファイルや議事メモ、最悪でも紙のメモなどの形で保存しているでしょうから、それをコピーしてタイムスタンプを突けて渡すだけです。引継ぎなどは基本的に無用です。資料を用いる目的が違うのですから引継ぎは無駄なのです。


どういうわけか分かりませんが、ハカーの皆さんはこの資料の開示に心理的な抵抗を持っているようです。おそらく普段ビッグマウスで『まともな仕様書のかけないやつはハカーになれない』などと吹聴しているプライドが、自分たちの杜撰な資料管理を白日の下に晒すのをためらってしまうのかもしれません。


そういうことが見受けられる場合によく使われるフレーズは「不完全でも結構です」「お手は煩わせません」というものです。した手に出るならそんな感じでもいいですが、ハカーにより上を目指してほしいなら、解析作業で不足が感じられた部分については、はっきりと公式に指摘する仕組みが必要でしょう。


これは評価しにくいハカーのみなさんの仕事を評価する尺度のヒントになるかもしれません。


もっとも単純な心理的障壁は『自分がつくったものの不具合は自分で抽出して自分で直すべき』というものかもしれません。不具合対策部隊の側にもそういう誤った考えを持っている人が多数いそうです。ですが、実際には外から見れば誰が担当しようが『技術者が不具合を作りこんで技術者が直す』のです。猫の額もない縄張り意識で、時間を無駄にすることのないようにしたいものです。


比較優位の考え方では、以下のような一般的な分業にまつわる考え方はちょっとずれています。



  • (とにかく)分業した方が納期が短くなる

  • 単価の高い人と低い人を混ぜて平均単価(予算)を調整する


詳しくは比較優位の解説をご覧ください。経済用語でよく知られたものなので、そこらじゅうにあると思います。


私がとにかく着目しているのは、



  • どんなに手の遅い人でも納期の短縮に寄与できる


点です。


話が前後して申し訳ありませんが、最初の方で書いたように、任せる側、任せられる側双方が正しく比較優位を理解していないと、妙な優越感・劣等感が組織間に生じてしまうかもしれません。


個人の能力は大部分が個人の努力に負っておりアウトプットで評価するべきですが、組織の能力を強化するための方法はいくらでもあります。しかし残念なことに、上から下までみんなが誤解しています。



素人考えでぐちゃぐちゃと書いてみました。根本的に比較優位を勘違いしていたらごめんなさいです。