それとも道は合ってるが、途中の下り坂を通過しているだけなのか。
ピープルウェアという本をときどき読み返すと、そのときそのときで、違う章に目が留まります。
最近読み返していて見つけたのはこの部分。
次の思考実験を頭に描いてほしい。100人に 「どの組織、文化、国家が、品質の高いことで有名か ?」と質問したとする。今 日ではおそらく大半の人が日本 と答えるだろう。別の100 人に「どの組織、文化、国家が生産性の高いことで有名か ?」という質問をしたとする。やはり、ほとんどの人が日本と答えるはずだ。品質の リーダーとして世界で認められている国民は高い生産性でもよく知られている。
品質とコストにはトレードオフがあるのであれば、高い品質のための開発には高いコストが必要となります。デマルコさんはそうは考えていないわけで。
日本の品質に対する考え方についての記述は続きます。
日本のソフ トウエア事情についての優れた解説者である、田島、松原の論文の一節を紹介する。
『価格と品質は トレードオフの関係にあるという考えは、日本には存在しない。反対に、高品質がコスト低減をもたらすという考えが広く受け入れられている。』
ひっくり返せば、『低いコストで高い品質を得ることは可能』ということでもあります。
最後にもうひとつ。
ある日本の企業、特に日立ソフトウェアエンジニアリングと、一部の富士通の部門では、十分な品質水準に達していないと判断された製品の出荷を拒否する強力な権限をプロジェクトチームが持っている。顧客が、品質基準以下でも何でもいいから早く出荷してほしいと切望しても、出荷品質基準に達しないかぎり出荷を延期するのである。もちろん、日本のプロジェクト管理者も、アメリカと同様の強烈なプレッシャーを受けている。品質が悪 くてもいいから今すぐ出荷せよとの重圧下にいる。 しかし、品質優先の文化が出来上がっているので、部下に命じて低品質で妥協させるよりも、出荷を遅らせた方がよいことを知っている。
# 今のHitachiやFujitsuの中の人が読んでも「何を当たり前のことを」と思うのだろうか・・・
製造業の現場で同じ光景を実際に見ていた人間としては、うまくいかないソフトウェア開発の現場で足りないのは、名ばかりではない品質保証部門つまり、出荷拒否権限を持つQA部隊だと率直に思いました。
出荷拒否権限は、組織内でのリリースに対するものも必要でしょう。そして、比較的うまく回っている組織では品質目標値をクリアしない場合は、リリースが遅らされるのが日常光景だということです。それも実際に見たことがあります。
# リリース日が守られるということは、もっとテストをしてもっと不具合を摘出できる可能性があるということかもしれません。
リリースが数日遅れることを単なる遅延と見ないで、リリース先や市場に低品質なソフトウェア部品や製品が流れ出すのを防いで、莫大なコストを節約しているのだと考えられるかどうかということでしょうかね。

- 作者: トム・デマルコ,ティモシー・リスター,松原友夫,山浦恒央
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2001/11/26
- メディア: 単行本
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